「サポート終了」で何が変わったのか

まず誤解されやすい点から整理します。サポートが終了しても、Windows 10のPCが動かなくなるわけではありません。電源を入れれば起動し、ExcelもWordも業務ソフトも、これまでどおり使えます。だからこそ「特に困っていないので、そのまま使っている」という状態が生まれやすいのです。

変わったのは、Microsoftからのセキュリティ更新プログラム(弱点をふさぐ修正)が、無償では提供されなくなったことです。Windowsには、ほぼ毎月のように新しい弱点(脆弱性)が見つかっています。サポート期間中は修正が配られていましたが、終了後に見つかった弱点は、ESUを利用していない限り、ふさがれないまま残り続けます。

使い続けると何が起きうるか

  • ウイルス・ランサムウェアの感染:メールの添付ファイルや不正なWebサイトから、ふさがれていない弱点を突かれる可能性が高まります。社内ネットワークでつながっている他のPCやファイルサーバーに広がることもあります。
  • 取引先からの指摘:取引先によっては、セキュリティ対策の確認でサポート切れOSの使用有無を尋ねられることがあります。
  • 新しいソフトや周辺機器が対応しない:業務ソフトの新しい版、プリンターのドライバー、ブラウザなどが、時間とともにWindows 10を対象外にしていきます。
  • トラブル時に相談先がない:ソフト会社やPCメーカーに問い合わせても、「サポート対象外のOSです」と言われやすくなります。

すぐに何かが起きるわけではありませんが、時間がたつほど危険は少しずつ積み上がっていく、という性質のリスクです。

ESU(延長セキュリティ更新)の位置づけ

ESU(Extended Security Updates)は、サポート終了後も一定期間、重要なセキュリティ更新だけを受け取れるようにするMicrosoftの仕組みです。注意したいのは、個人向けと法人向けで条件が異なる点です。

区分主な対象提供期間・条件
個人向けESU家庭で使うWindows 10 Home/Pro2027年10月12日まで延長されることが2026年6月に発表されています
法人向けESU会社で管理するPC有償。最大3年間で、1年ごとに更新して購入する仕組み

法人の場合、個人向けの条件はそのまま当てはまりません。「家のPCは無料で延長できたから、会社のPCも同じだろう」と考えないよう注意してください。法人向けESUの価格や購入方法、年ごとの条件は、Microsoftの公式情報や取引のあるPC販売店・ライセンス販売店に確認してください。

ポイント

ESUはあくまで「乗り換えまでの時間を買う」ための橋渡しです。受け取れるのはセキュリティ更新だけで、新機能や不具合修正、技術的な問い合わせ対応は含まれません。ESUを契約する場合も、「何年目までに何台を入れ替えるか」という出口の計画とセットで考えましょう。

社内に残っているWindows 10を洗い出す

対応を考える前に、「どのPCがまだWindows 10なのか」を正確に把握します。10〜100名規模の会社では、PCの管理台帳がない、あっても数年前から更新されていない、ということがよくあります。事務所のPCだけでなく、倉庫の出荷用PC、工場の装置横にあるPC、会議室のPC、社長の自宅に持ち帰っているノートPCなども忘れずに数えてください。

OSの確認は、各PCで「設定」→「システム」→「バージョン情報」を開けば分かります。「Windows の仕様」の欄に「Windows 10」か「Windows 11」かが表示されます。あわせて次のような表を作ると、その後の判断がスムーズになります。

PC名利用者・設置場所OS購入年Windows 11対応可否使っている業務ソフト
JIMU-03経理 AさんWindows 10 Pro2019年可会計ソフト、給与ソフト
SOKO-01倉庫 出荷担当(共用)Windows 10 Pro2017年不可(CPUが対象外)販売管理(クライアント)、送り状発行
KOJO-02工場 加工機の横Windows 10不明未確認加工機の制御ソフト
EIGYO-05営業 Bさん(ノート)Windows 10 Pro2020年可(未実施)見積もりExcel、Web会議

「使っている業務ソフト」の欄は、後で互換性を確かめるときに最も重要になります。社員本人に聞くと、「毎月1回だけ使う古い集計ツール」のように、普段意識していないソフトが出てくることがあります。

Windows 11にアップグレードできるか確かめる

Windows 11には、Windows 10よりも厳しいハードウェアの条件があります。主なものは、CPUの世代が対象に含まれていること、TPM 2.0(PCの中で暗号の鍵などを守るための部品)が有効になっていること、セキュアブート(起動時に不正なプログラムが動かないようにする仕組み)に対応していること、メモリやストレージの容量が足りていること、などです。一般的には、購入から年数がたったPCほど条件を満たさない傾向があります。

確認の方法

  • PC正常性チェックアプリ:Microsoftが提供しているアプリで、そのPCがWindows 11の条件を満たしているか、満たしていない場合はどの項目が足りないかを表示してくれます。
  • Windows Updateの画面:条件を満たしているPCでは、Windows 11へのアップグレードの案内が表示されることがあります。
  • PCメーカーの情報:機種ごとにWindows 11の動作確認状況を公開しているメーカーもあります。

「TPMが無効になっているだけ」の場合など、設定の変更で条件を満たせるケースもあります。ただし、PCの起動設定(BIOS/UEFI)を触る作業になるため、慣れていない方が一台ずつ試すのはおすすめしません。

注意

インターネット上には、条件を満たさないPCに無理やりWindows 11を入れる方法も紹介されています。しかし、Microsoftがサポートしない構成になり、更新プログラムが正しく届かなくなるおそれがあります。業務用のPCでは、条件を満たさないPCへの導入は避けてください。

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1台ずつ対応方針を決める

棚卸し表ができたら、1台ずつ対応方針を決めます。会社全体で一つの方針にそろえる必要はありません。PCごとの状況に合わせて、次の4つから選ぶのが現実的です。

対応方針向いているPC注意点
Windows 11にアップグレード条件を満たしていて、購入からの年数が浅いPC業務ソフトの動作確認を先に行う。作業前にデータをバックアップ
PCを買い替える条件を満たさないPC、購入から年数がたっていてバッテリーや部品も劣化しているPCデータ移行と業務ソフトの再インストール・ライセンス移管の手間がかかる
ESUで一時的に延長業務ソフトがWindows 11に未対応で、対応版の提供や入れ替えを待つ必要があるPC有償で、年ごとに更新が必要。出口の時期を決めておく
ネットワークから隔離して使う加工機・検査装置などにつながった装置用PCで、OSを変えられないものインターネットや社内LANから切り離し、USBメモリの持ち込みにもルールを設ける

装置につながったPCの考え方

工場の加工機や測定器、医療・検査機器などには、制御用のPCがセットになっているものがあります。こうしたPCは、装置メーカーが動作を保証したOSでしか動かないことが多く、勝手にWindows 11へ上げると装置が動かなくなるおそれがあります。まずは装置メーカーに、Windows 11対応の更新や代替の制御PCが用意されているかを問い合わせてください。

当面そのまま使う場合は、インターネットにも社内ネットワークにもつながないのが基本です。加工データの受け渡しにUSBメモリを使っているなら、使うUSBメモリを専用に決め、事務所のPCでウイルスチェックしてから差し込む、といった運用ルールを作っておきます。どうしてもネットワーク接続が必要な場合は、他のPCと通信できる範囲を絞るなどの対策が必要になるため、ネットワークに詳しい業者に相談してください。

残ったPCを片付ける現実的な計画

すでにサポート終了から1年がたっています。残っている台数が多い場合でも、一度に全部を入れ替える必要はありませんが、「いつまでに何をするか」は決めておく必要があります。一般的な目安として、次のような順番で進めると無理がありません。

順番対象考え方
1メール・Webを日常的に使い、顧客情報や経理データを扱うPC外部からの攻撃を最も受けやすいので最優先
2条件を満たしていて、アップグレードだけで済むPC費用がほとんどかからないので早めに片付ける
3買い替えが必要な事務用PC予算に合わせて数か月単位で分けて実施
4業務ソフトの都合ですぐ移行できないPCESUでつなぎつつ、ソフトの対応時期に合わせて移行
5装置用PC隔離で安全を確保し、装置の更新計画と一緒に検討

買い替えの予算が一度に取れない場合は、「今期はこの5台、来期はこの5台」と決算期ごとに分けるのが現実的です。PCの入れ替えは、データの移行や業務ソフトの再設定で1台あたり半日〜1日程度かかることも珍しくありません。繁忙期を避け、1日に入れ替える台数を絞って計画しましょう。

入れ替え計画のチェックリスト
  • 社内のWindows 10のPCを、装置用・持ち出し用も含めてすべて洗い出した
  • 各PCのWindows 11対応可否を確認した
  • 各PCで使っている業務ソフトと、そのWindows 11対応状況を確認した
  • PCごとに「アップグレード/買い替え/ESU/隔離」の方針を決めた
  • ESUを使うPCについて、何年目までに移行するかを決めた
  • 装置用PCをネットワークから切り離し、USBメモリの運用ルールを決めた
  • 入れ替えの日程を、決算期・繁忙期を避けて組んだ
  • 入れ替え前のバックアップと、古いPCのデータ消去の方法を決めた

業務ソフトの互換性で気をつけること

Windows 11への移行で最もつまずきやすいのが、業務ソフトの互換性です。市販の会計ソフトや給与ソフトの多くはWindows 11に対応していますが、古い版のままだと対象外のことがあります。ソフトの提供元のサイトで「動作環境」を確認し、必要なら新しい版への更新を先に済ませておきます。

特に注意したいソフト

  • 昔のシステム会社が個別に作った業務ソフト:作った会社がWindows 11での動作確認をしていないことが多く、作った会社自体と連絡が取れないこともあります。
  • Excelマクロ・Accessで作られた社内ツール:Windowsだけでなく、Officeの版が変わることで動かなくなる場合があります。作った人が社内にいるうちに動作を確認しておきましょう。
  • 専用のプリンターや読み取り機器を使うソフト:送り状プリンター、バーコードリーダー、ICカードリーダーなどは、ドライバー(機器を動かすためのソフト)がWindows 11に対応しているかの確認が必要です。
  • 古いブラウザの機能を前提にした社内Webシステム:画面が崩れたり、ボタンが押せなくなったりすることがあります。

確認の手順としては、まず1台だけWindows 11のPCを用意し、そのPCで実際の業務の流れ(受注入力から請求書発行まで、など)をひととおり試すのが確実です。いきなり全台を切り替えて「月末の締め処理だけが動かなかった」となると、業務が止まってしまいます。

注意

業務ソフトがWindows 11で動かないことが分かった場合、「そのためにWindows 10を使い続ける」という判断は長くは続けられません。ソフトの改修や入れ替えには時間がかかるため、ESUでつないでいる間に、ソフト側の対応を並行して進めることが大切です。

まとめ

  • Windows 10は2025年10月14日にサポート終了。PCは動き続けるが、新たな弱点がふさがれないまま残るリスクが積み上がっていく
  • 個人向けESUと法人向けESUは条件が違う。法人向けは有償・最大3年・年ごとの更新で、あくまで移行までの橋渡し
  • まず装置用・持ち出し用も含めてWindows 10のPCを洗い出し、Windows 11対応可否と業務ソフトを一覧にする
  • PCごとに「アップグレード/買い替え/ESU/隔離」を選び、危険度の高いPCから順に片付ける
  • 業務ソフトは1台で実際の業務の流れを試してから切り替える。動かないソフトはESUの期間中に対応を進める
参考資料・公式情報

※ 製品のサポート期限や制度は変わることがあります。最新の情報は各公式ページでご確認ください。