最初の30分でやること

システムが止まったときに最初にやるべきことは、直そうとすることではなく、状況を正確に記録し、どこまで影響が出ているかを確かめることです。この2つができていれば、ベンダー(システムを作った会社や保守会社)が原因を特定するまでの時間が大きく変わります。

ステップ1:状況を記録する(0〜10分)

気づいた人が、その場で次の内容をメモします。紙でもスマートフォンのメモでも構いません。

  • いつ:止まったことに気づいた時刻。直前まで正常に動いていた時刻が分かればそれも。
  • 誰が:どの社員が、どのパソコン(席・端末名)で気づいたか。
  • どの画面で:どのメニューを開いて、どのボタンを押したときに起きたか。
  • 何が表示されたか:エラーメッセージの画面をスマートフォンで写真に撮る。文章を書き写すより確実で、メッセージに含まれる番号や英語の文字列が原因特定の手がかりになります。
  • 直前に何があったか:Windowsの更新、停電、新しいソフトの導入、設定変更、機器の移動など、思い当たることがあれば。

ステップ2:影響範囲を確かめる(10〜20分)

次に、止まっているのが「自分のパソコンだけ」なのか「全員」なのかを確かめます。これだけで原因の見当がかなり絞り込めます。

確かめること分かること(一般的な見当)
隣の席のパソコンでも同じ画面が開けるか1台だけなら、その端末の問題の可能性が高い
インターネット(普段のWebサイト)は見られるか見られなければネットワークや回線の問題の可能性
共有フォルダやプリンターは使えるか使えなければ社内ネットワークやサーバー機の問題の可能性
システムの一部の機能だけか、全部か一部なら特定の処理やデータの問題の可能性
他の拠点・在宅の社員はどうか全拠点で止まっていればサーバーやクラウド側の問題の可能性

あわせて、業務への影響も整理します。今日中に出さなければならない請求書や出荷はあるか、お客様を待たせているか、といった点です。これが後で「どれくらい急いで対応してほしいか」をベンダーに伝える根拠になります。

ステップ3:責任者に報告し、連絡役を1人決める(20〜30分)

記録と影響範囲をまとめて、社長や部門長などの責任者に報告します。そのうえで、ベンダーとのやり取りをする窓口を1人に決めます。複数の社員がそれぞれベンダーに電話をすると、情報が食い違ったり、同じ質問に何度も答えたりして、かえって復旧が遅れます。

やってはいけないこと

焦っているときほどやってしまいがちで、状況を悪くするおそれがある行動です。

注意:障害時に避けたい行動
  • 再起動を何度も繰り返す:1回の再起動で直ることはありますが、繰り返すと原因の手がかり(記録やメモリ上の情報)が消えたり、データの書き込み途中で止まってデータが壊れたりすることがあります。特にサーバー機の再起動は、ベンダーに確認してからにします。
  • ソフトを勝手にアンインストール・再インストールする:設定やデータが消え、元の状態に戻せなくなることがあります。
  • 同じ操作を何度も試す:登録ボタンを押し続けると、復旧後に同じ伝票が二重に登録されていることがあります。
  • インターネットで見つけた対処法を試す:自社のシステムに当てはまるとは限りません。
  • サーバー機の電源を抜く・機器を移動する:強制的な電源断はデータ破損の原因になります。

例外は、ウイルス感染や不正アクセスが疑われる場合です。画面に身代金を要求するメッセージが出た、ファイル名が一斉に変わった、といったときは、被害の広がりを防ぐため、そのパソコンをネットワークから切り離します(LANケーブルを抜く、Wi-Fiを切る)。電源は切らずにそのままにし、すぐにベンダーや専門の相談窓口に連絡してください。

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誰に連絡し、何を伝えるか

連絡先は「止まっているもの」で変わる

中小企業の業務システムは、いくつもの会社の製品やサービスの組み合わせで動いていることが一般的です。影響範囲の確認結果をもとに、連絡先を選びます。

  • 業務システム自体のエラー:システムを作った会社、または保守契約を結んでいる会社
  • インターネットがつながらない:回線事業者・プロバイダ、ルーターを設置した業者
  • サーバー機やパソコンが起動しない:機器の購入元・リース会社・メーカーの保守窓口
  • クラウドサービスが使えない:サービス提供会社の障害情報ページ(まず全体的な障害が出ていないか確認)

どこに連絡すればよいか判断がつかない場合は、まず業務システムの保守会社に連絡し、状況を伝えて切り分けを相談するのが一般的です。保守契約で受付時間や対応範囲が決まっていることが多いため、契約内容も確認しておきましょう。

ベンダーに伝える情報

最初の連絡で次の情報をそろえて伝えると、やり取りの往復が減り、復旧が早まります。電話の後に、同じ内容と写真をメールでも送っておくと確実です。

ベンダーへの連絡チェックリスト
  • 会社名・連絡窓口の担当者名・折り返し先の電話番号
  • 対象のシステム名(契約書や画面に表示されている名称)
  • 発生時刻と、最後に正常に動いていた時刻
  • どの画面で、どの操作をしたときに起きたか
  • エラーメッセージの写真
  • 影響範囲(1台だけか全員か、一部の機能か全部か)
  • 直前の出来事(Windows更新、停電、設定変更など)
  • すでに試したこと(再起動した、など)
  • 業務への影響と、いつまでに復旧が必要か(例:本日15時の出荷までに)

「すでに試したこと」は、言いにくくても正直に伝えてください。再起動や再インストールを試したことを伏せると、ベンダーが誤った前提で調査を進め、かえって時間がかかります。

業務を止めないための代替手段

システムの復旧には、数時間から、部品の取り寄せが必要な場合は数日かかることもあります。その間も業務を続けるための「つなぎ」の方法を決めておきます。

業務代替手段の例復旧後にやること
受注・売上の入力手書きの伝票、決めた様式のExcelに記録システムへ後から入力し、件数・金額を照合
納品書・請求書の発行Excelのひな形で作成、または発行を数日遅らせる旨を取引先へ連絡手作業で作った分を登録し、二重発行がないか確認
在庫の確認前日の在庫表(印刷・出力したもの)と現物確認入出庫の記録を突き合わせて在庫数を修正
顧客情報の参照定期的に出力しておいた顧客一覧停止中の変更点を反映

代替手段を使ったときは、手書きやExcelで処理した分に印や連番を付けて、後で入力漏れ・二重入力が起きないようにすることが大切です。代替手段の様式(手書き伝票の用紙やExcelのひな形)は、障害が起きてから作るのではなく、あらかじめ用意して保管場所を決めておきます。

ポイント

代替手段の多くは、直近のデータが手元にあることが前提です。顧客一覧や在庫表、得意先ごとの単価表などを、月に1回や週に1回といった頻度で出力・印刷しておくだけで、止まったときの混乱はかなり抑えられます。あわせて、システムのデータのバックアップが取れているか、そこから実際に戻せるかも、平常時に確かめておきましょう。

復旧した後にやること

システムが動き始めたら一段落ですが、ここで終わりにすると、同じ障害が繰り返されたり、データの食い違いが後から見つかったりします。

データを確認し、代替手段の分を戻す

障害が起きた時間帯のデータが正しく保存されているか、途中で止まった処理がないかを確認します。手書きやExcelで処理した分をシステムに入力し、件数と合計金額を照合します。

原因と再発防止策をベンダーに確認する

ベンダーに、原因・行った対処・再発防止策を聞き、できれば書面(メールで構いません)でもらいます。原因が「サーバー機の部品の劣化」「OSのサポート切れのソフトが更新に対応できなかった」など、古さに由来するものであれば、同じことが再び起きる可能性が高いと考えるべきです。機器の入れ替えや保守体制の見直しを検討するきっかけにしてください。

社内で記録を残す

次のような項目を、障害記録として1件ごとに残しておきます。記録がたまると、「毎年月末に止まる」「特定の端末で繰り返し起きる」といった傾向が見え、保守会社と改善を相談する際の材料にもなります。

記録する項目記入例
発生日時・復旧日時10月5日 9:10発生、同日 13:40復旧
対象システム・症状販売管理システム。ログイン時にエラー、全端末で使用不可
業務への影響午前の受注入力が停止。手書き伝票で対応(18件)
原因サーバー機のディスク容量不足(ベンダー報告)
対処と再発防止策不要ファイル削除。容量の定期確認を保守内容に追加
社内の反省点連絡先が分からず、ベンダーへの連絡まで40分かかった

事前に準備しておく連絡先一覧と復旧手順書

障害対応の良し悪しは、起きる前の準備でほぼ決まります。特に用意しておきたいのが、連絡先一覧と簡単な復旧手順書です。どちらもA4用紙1〜2枚程度で十分です。

連絡先一覧

システムや機器ごとに、次の項目を一覧にします。

対象連絡先(会社・窓口)電話・メール受付時間契約番号・顧客番号社内の担当者
販売管理システム保守会社A サポート窓口(記入)平日9〜18時(記入)総務B/営業C
インターネット回線回線事業者 故障窓口(記入)24時間(記入)総務B
サーバー機・PC購入元D社(記入)平日9〜17時(記入)総務B
複合機リース会社E(記入)平日9〜17時(記入)営業C

契約番号や顧客番号は、問い合わせの際に必ずと言ってよいほど聞かれます。一覧は紙に印刷して、事務所の決まった場所にも置いておきます。システムやパソコンが止まっているときに、パソコンの中にしかない一覧は見られないからです。

復旧手順書のチェックリスト

復旧手順書といっても、技術的な手順を細かく書く必要はありません。社内の誰が見ても最初の動きが分かる内容になっていれば十分です。

復旧手順書に入れておく項目
  • 障害に気づいたら最初に記録すること(いつ・誰が・どの画面・エラーの写真)
  • 影響範囲の確かめ方(隣のPC、インターネット、共有フォルダ)
  • 報告する責任者と、不在時の代わりの人
  • やってはいけないこと(再起動の繰り返し、再インストールなど)
  • 症状別の連絡先(連絡先一覧の参照先)
  • 業務ごとの代替手段と、様式の保管場所
  • ウイルス感染が疑われるときの対応(ネットワークから切り離す)
  • バックアップの保管場所と、復元を依頼する先
  • サーバー機の設置場所と、管理者パスワードを保管している場所(パスワードそのものは書かない)

作ったら、年に1回程度は内容が古くなっていないかを見直します。担当者の異動、保守会社の変更、電話番号の変更などで、いざというときに役に立たない一覧になっていることがあるためです。

なお、保守会社がいない、あるいはベンダーと連絡がつかなくなっているシステムがある場合は、障害が起きる前に引き受け先を探しておくことをおすすめします。

まとめ

  • 止まったらまず直そうとせず、いつ・誰が・どの画面で・エラーの写真を記録し、影響範囲を確かめる
  • 再起動の繰り返しや勝手な再インストールは避け、ウイルスが疑われるときはネットワークから切り離す
  • 連絡窓口を1人に決め、チェックリストの情報をそろえてベンダーに伝える
  • 手書き伝票やExcelのひな形で業務をつなぎ、復旧後に照合して入力漏れ・二重入力を防ぐ
  • 原因・再発防止策・社内の反省点を記録し、連絡先一覧と復旧手順書を紙でも用意しておく
参考資料・公式情報

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